勤務先の研究紀要の第6号がもうすぐできあがります。
何人かの方からお問い合わせ頂いたので(ありがとうございます)一足先に目次をご紹介します。
植松有希「資料紹介 梅ヶ谷津偕楽園所蔵 伝木下逸雲「描絵四季耕作図小袖」」
竹内有理「研修報告 多文化国家の博物館政策-シンガポールの国立博物館における取組み-」
大石一久「垣内・潜伏キリシタン長墓墓碑群」
平岡隆二「「測量秘言」の写本について」
深瀬公一郎「唐人屋敷の維持管理と長崎の大工職人」
岡本健一郎「対馬藩における長崎屋敷移転と御用商人」
錦織亮介「長崎唐通事の肖像画」
長崎らしく、異文化てんこ盛りのラインナップというか、市中雑居的な感じが、気に入っています。
植松さんのは、平戸に残る逸雲筆の珍しい小袖について。竹内さんのは、シンガポールでの研修報告。大石さんのは、昨年のクリスマスの日(!)に発表された、潜伏キリシタンの墓碑群について。ちなみに大石さんは、この春長崎文献社から『キリシタン墓碑総覧』を出版予定で、そちらもご期待ください(ちなみに私も1本書かせてもらいました)。深瀬さんのは、近世貿易都市・長崎における大工という存在について。岡本さんのは、御用達の観点から見た、長崎の対馬藩屋敷の移転問題。最後に錦織先生には、長崎の「お絵像さま」のルーツに迫る貴重な論考をお寄せいただきました。
僕のは、なんだかよくわからないタイトルで恐縮ですが、2004年に『科学史研究』に校訂テキストを発表した『測量秘言』という本の現存写本について書きました。
内容は校訂テキストの補論で、あのときは書く紙幅がなかったけど、こういう理由で東北にある3つの写本を使って校訂したんですよ、ということを言いたかっただけなのですが、8年越しに(準備期間を入れると足かけ10年越しに)この問題を取り上げようと思いたったのは、今村さんの論文「『測量秘言』成立の背景について」が昨年発表され、大いに刺激を受けたからです。
長崎の観点からみると、今村さんのお仕事は、阿蘭陀通詞研究としてはもとより、大庭脩先生が中国についてされたお仕事のカウンターパートとしても、また蘭学勃興期以前の日欧学術交流史の空白を埋めるものとしても、とても重要なものだと思います。ですので僕も、これで17-18世紀の研究がちょっとでも進むといいな、と思いながら書きました。
4月の声を聴くころには、博物館で入手可能になると思います。ご期待ください。