土田健次郎「儒教とは何か」、大月杏奈ほか編『儒教のかたち こころの鑑:日本美術に見る儒教』(展覧会図録)サントリー美術館、2024年、8-14頁。
日本の歴史に儒教が果たした役割が簡潔かつ見事にまとめられている。長年の研究で練り上げられた独自の視点と語り口が光っている。こういう文章を図録で読めるのも嬉しい。展覧会もとてもよかった。
土田健次郎「儒教とは何か」、大月杏奈ほか編『儒教のかたち こころの鑑:日本美術に見る儒教』(展覧会図録)サントリー美術館、2024年、8-14頁。
日本の歴史に儒教が果たした役割が簡潔かつ見事にまとめられている。長年の研究で練り上げられた独自の視点と語り口が光っている。こういう文章を図録で読めるのも嬉しい。展覧会もとてもよかった。
明和2年(1765)9月20日付で「堀田兵之助」が渋川図書光洪宛に提出した、天文暦術の誓約書が現存する。これは津和野藩士の堀田仁助(1745-1829、通称ははじめ兵之助、号は泉尹)のことだろう。堀田は天明3年(1783)に幕府天文方属員となり、寛政改暦にも参加し、また地理学・地図学の分野で業績を残した。堀田は山路の弟子の藤田貞資に和算を学んだが、渋川光洪の暦術の弟子にもなっていたことは、残される史料の内容から考えて、ちょっと意外で面白い(当時の文脈では当然のことだったかのかもしれない)。
1603・4年イエズス会日本年報(報告集第Ⅰ期第4巻、277頁)
ここに、日本の高貴できわめて古い家系の異教徒の若者がいた。彼はかつて太閤様の小姓を務め、現在は福島(正則)殿に仕えており、彼の一寵臣の嗣子である。この男は禅宗に属し、その宗派の仏僧たちは多額の金を支払う何人かの人たちに或る種の黙想(坐禅)をさせる習わしだが、(仏僧らは)彼にもそれを行なわせた。その黙想は、救済はなく、我々に見えている肉体的なこれらすべてのものには外見的なもの以外には真の存在はないと要約される。つまり、万物はこの現在の生をもって終るということである。そして、生来、この若者は才能に優れ雄弁なので、友人のキリシタンの兵士たちとつねに大論争を交わしていた。
ついに、或る時、他の二人のキリシタンといっしょにこの城のある場所を見張ることになった際に、論戦はすさまじいものとなり、嗄声になるまで一晩中をそれに費やし、最後に、説教を聞きに来い、そうすればどんなに誤っているかが判るであろうということになった。彼は、彼らの言うことに同意して聞きに来たが、それは、改宗するよりも論争したいと思ったからである。このようにして、初回の説教では、物凄い怒鳴り声をあげ、ひどくしつこく言い張ったので、説教している広間では彼のせいで話し声が聞こえぬほどであった。
二回目には、天と地と万物の創造者が存在することを証明した根拠の有効性を見て、若干穏やかであった。そのため、その後、聞いたことを一人だけで考察し始めた。そして、自然の光が教えることにすべてがかなっていることを見出し、空が澄みわたり清朗な或る夜、月と星を長い間注意深く眺め、それらがいとも規則的な歩みで運行し、少しずつ西に近づき、ついに若干の星が地平線の下に沈むことに気づいた。そして、このことから、この世の秩序と調和に思いを巡らしていった。こういうわけで、デウスの恩恵をもって次のように結論した。これらすべては万物のあの第一原因、(すなわち)キリシタンの教えがデウスと呼んでいるものの明白な作用以外の何物でもありえない。したがってただ(この教え)のみが真実であり、仏僧たちから学んだすべてはまったくの誤りと見せかけである、と。
A growing bibliography of what has been written on Sufera no nukigaki スヘラの抜書
last updated: 2024.3.27
<primary sources>
Sufera no nukigaki スヘラの抜書. Herzog August Bibliothek, Cod. Guelf. 7.5 Aug. 4°, ff. 318r‒423v (the corresponding digital images are numbered 765‒850). The digital images are available on libraryʼs website: http://diglib.hab.de/mss/7-5-aug-4f/start.htm.
<secondary materials>
Osterkamp, Sven. 2020. “A Rediscovery in the Herzog August Bibliothek. The Wolfenbüttel Manuscript of the Jesuit Compendia of Philosophy, Theology and Cosmology in Japanese Translation.” HABlog. Accessible at https://www.hab.de/en/a-rediscovery-in-the-herzog-august-bibliothek/.
平岡隆二. 2022. 「東西コスモロジーの出会いとキリシタン文献」、岸本恵実・白井純編『キリシタン語学入門』八木書店、2022年、39-40頁。
ノイツラ・ゾフィー(Neutzler [Takahashi], Sophie). 2022. 「日本イエズス会Compendiaの新出写本とその表記」、第397回日本近代語研究会2022年度秋季発表大会口頭発表、https://www.academia.edu/103043398.
Osterkamp, Sven. 2023. “The Textual History of the Jesuit Compendia in Latin and Japanese as seen from the Newly Identified Manuscript at Herzog August Bibliothek, Wolfenbüttel.” Historia scientiarum 32-2 (2023), pp. 63‒87.
Hiraoka, Ryuji. 2023. “The discovery and significance of Sufera no nukigaki (Selection on the sphere), a Jesuit cosmology textbook in Japanese translation.” Historia Scientiarum 32‒2 (2023), pp. 88‒116.
Kishimoto, Emi. 2023. "Stairway to the Stars: Jesuit Training and the Dictionarium Latino Lusitanicum, ac Japonicum (1595)." in Lachaud, François and Bussotti, Michela eds. Mastering Languages, Taming the World: The Production and Circulation of European Dictionaries and Lexicons of Asian Languages (16th–19th Centuries). EFEO: 2023, pp. 61-76.
〈論文〉
「開陽丸引き揚げ文書と梅文鼎『暦算全書』 」、『洋学』30号、2023年5月、159-165頁。
「キリシタンと時計伝来」、大橋幸泰編『近世日本のキリシタンと異文化交流』勉誠社、2023年7月、11-31頁。
〈資料紹介〉
「「キリシタンと時計伝来」関連史料」、大橋幸泰編『近世日本のキリシタンと異文化交流』勉誠社、2023年7月、74-88頁。
〈共編〉
〈研究発表〉
「禁教・潜伏・発見:キリシタンの3世紀(1614-c.1920)」、人文研アカデミー2023シンポジウム「もう一つの〈キリシタン信徒発見〉:1879年茨木・千提寺とフランス人宣教師」、京都、2023年7月17日。
“A Jesuit Cosmology Textbook in Japanese Translation: the Discovery and Significance of Sufera no nukigaki スヘラの抜書(Selection on the Sphere)”、The 16th International Conference on the History of Science in East Asia (16th ICHSEA)、Frankfurt am Main、 2023年8月22日。
“Exploring Cosmology with a Clockwork Astronomical Model: A Public Scientific Lecture in 18th Century Japan”, EHESS seminar “Sciences et savoirs de l'Asie orientale dans la mondialisation (XVIe-XXIe siècle)”, Paris、 2023年11月8日。
“Cosmology in Translation: A Case of Jesuit Textbook during Japan’s “Christian Century” 、International Workshop “Latin as a Cultural Interface between Europe and East Asia in Catholic Missions (16th-18th Centuries)” organised by Université d'Orléans and IRFA, Paris、2023年11月9日。
「キリシタン布教と科学伝来: 新発見の宇宙論教科書『スヘラの抜書』を中心に」、洋学史学会若手部会例会、大阪、 2023年12月17日。
〈新聞報道など〉
(取材)「西洋天文学 最古の邦訳 16~17世紀、独で発見 来日宣教師が編集」、『読売新聞』夕刊一面・Web版、2023年9月25日。
(取材): 「‘Oldest’Japanese Text on Western Science Unearthed in Germany Library」、『The Yomiuri Shinbun』Culture欄・Web版、2023年9月26日。
(取材):「家族内で信仰 改宗に反対も―大阪・茨木の隠れキリシタン「発見」を再考察」、『毎日新聞』夕刊・文化面・Web版、2023年8月21日。
(取材):「関西の隠れキリシタンはいつ「発見」? 明治期の書簡を仏で確認」、『毎日新聞』夕刊社会面、2023年5月9日。
平岡隆二(共著):日本科学史学会編『科学史事典』丸善出版、2021年(担当:「江戸の天文暦学:西洋天文学知の多様な自己化」318-321頁)
平岡隆二(共著):洋学史学会監修、青木歳幸ほか編『洋学史研究事典』2021年(担当:「沢野忠庵」「ビュルゲル」「西学書」「坤輿万国全図」「長崎遊学」)
Ryuji HIRAOKA(共著): Bill M. Mak and Eric Huntington eds. Overlapping Cosmologies in Asia: Transcultural and Interdisciplinary Approaches. Brill, 2022( "Deciphering Aristotle with Chinese Medical Cosmology: Nanban Unkiron and the Reception of Jesuit Cosmology in Early Modern Japan." pp. 98-115).
平岡隆二(共著):平井松午・島津美子編『〈稿本・大名家本〉伊能図研究図録』創元社、2022年(担当:「長崎歴史文化博物館収蔵「伊能図」」267-273頁)。
平岡隆二(共著):岸本恵美・白井純編『キリシタン語学入門』八木書店、2022年(担当:「東西コスモロジーの出会いとキリシタン文献」39-40頁)。
<学会発表等>
HIRAOKA Ryuji:"A Public Cosmology Lecture with a Clockwork Astronomical Model in 18th Century Japan", 26th ICHST 2021 (International Conference of History of Science and Technology), Prague、オンライン、2021年7月28日。
平岡隆二:「イエズス会科学と近世仏教:初中期仏僧の西洋地球説への反応を中心に」、ReMo研合同研究会「科学、医療、宗教の相互連関─中近世のキリスト教と仏教を中心に─、オンライン、2021年9月15日。
平岡隆二:「開陽丸引き上げ文書と梅文鼎『暦算全書』」、洋学史学会オンラインシンポジウム「開陽丸引き揚げ文書について 幕府天文方と開陽丸」、オンライン、2021年11月14日。
この4月から、京大宇宙ユニットで以下の教育プログラムを実施します。私も科学史の立場から授業の一部を担当します。京大生だけでなく一般の方にも開かれたものなので、関心のある方はぜひ募集案内をご覧ください。
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「…万屋町には、小林謙貞という天文学、数学史上に重要な位置を占める人も住まっていた。
謙貞は林吉右衛門について天文、地理、星宿、暦法を修めた。この吉右衛門は、刊本長崎先民像[ママ]には吉左衛門に作ってあるが、稿本長崎先民像[ママ]には吉右衛門に作ってある。これを明らかにされたのは古賀先生であって、今日では吉右衛門が正しいとされているが、これは古賀先生の功である。
謙貞は二儀略説を著した。この書は内閣文庫にあって、わたしがこの書の存する事を知ったのは薮内清博士の示教によるが、これの写本は今井湊[ママ]さんの好意によって書架に加えることが出来た。」
出典:渡辺庫輔「長崎町づくし(105):郷土史の参考に 残っている若松[ママ]家系図」(長崎新聞、昭和37年7月7日付)
今年の前期は京大文学部の特殊講義「東西宇宙観の出会いと交流」の準備に追われ、夏以降も発表が重なったりでかなり忙しかった。コロナで講演が飛んだりもした。4月にはじまった人文研の研究班「仏教天文学説の起源と変容」はだいぶ軌道にのってきて、ありがたいことである。今年中にどうしてもまとめたかった原稿は、まだもうひとふんばり。だが、だいぶ目処が立ちつつある。アウトプットは少なめだが、現況を考えるとやむなし、というかよくがんばったと思う。2017年くらいから自分の研究は新しいフェイズに入ったと思う。とくに科学史事典の原稿を書かせてもらえたのは、ありがたかった。そのアイデアをどう形にしてゆくかが、来年以降の課題である。今年も公私ともに多くのみなさまのお世話になりました。みなさまどうぞよいお年を。
<出版物>
平岡隆二「江戸の天文暦学:西洋天文学知の多様な自己化」、日本科学史学会編『科学史事典』丸善出版、2021年5月、318-321頁。(項目執筆)
平岡隆二「沢野忠庵」「ビュルゲル」「西学書」「坤輿万国全図」「長崎遊学」、洋学史学会監修、青木歳幸ほか編『洋学史研究事典』2021年9月。(項目執筆)
<学会発表等>
HIRAOKA Ryuji. "A Public Cosmology Lecture with a Clockwork Astronomical Model in 18th Century Japan." at 26th ICHST 2021 (International Conference of History of Science and Technology), Prague (Zoom), 2021年7月28日。
平岡隆二「イエズス会科学と近世仏教:初中期仏僧の西洋地球説への反応を中心に」、科研費学術変革B”中近世における宗教運動とメディア・世界認識・社会統合(ReMo研)”合同研究会「科学、医療、宗教の相互連関─中近世のキリスト教と仏教を中心に─」(オンライン開催)、2021年9月15日。
平岡隆二「開陽丸引き上げ文書と梅文鼎『暦算全書』」、洋学史学会オンラインシンポジウム「開陽丸引き揚げ文書について 幕府天文方と開陽丸」、2021年11月14日。
問、天学ヲ学ブハ、仰見テ学ブヤ、書記ニ依テ学ブヤ。書ニ依ラバ何レノ書ニ依ンヤ。
曰、書ト云者ハ[7ウ]往古ノ法ト理トヲ入テ末代ニ遺ス器物ニテ、止コトヲ得ズシテ用ル物ナリ。尭舜孔子今存命玉ハヾ、何ゾ経典ヲ閲シテ学ンヤ。天地ハ古今一天地ニテ、伏羲ノ仰見玉フ三光モ即チ今日ノ日月星辰ナレバ、書ニ因テ学ビズトモ直ニ天地ヲ見テ学ブベシ。然ト雖ドモ、天地ハ長ク人命ハ限リ有リ。故ニ人間一生ノ間ダ仰ギ見ルト雖フトモ、イマダ窮ラザル所アラン。是故ニ、書記ニ依テ古人ノ説ヲ閲シ、古人ノ測算道理ヲ知テ、是ヲ自ラ天地ニ考験シテ、古人ノ非ヲ捨テ是ヲ取ルコト[8オ]肝要ナリ。縦ヒ聖人ノ語ト雖フトモ、天地ノ形体ニ合セズンバ何ゾ用ンヤ。易経ヲ尊ブガ如キモ、河洛卦爻ノ道理悉ク天地ノ形体ニ合スルヲ以テ、聖人ノ聖人タルコトヲ知テ尊信スル也。
古ヨリ一部ノ書ニ始終全ク天学ヲ説タルハナシ。適々有ト雖ドモ全ク用ルニタラズ。今多ク世間ニ流布スル所ノ天文地理ヲ著シタル書ハ『天経或問』ノミニテ、此外ニ用ベキ書ナシ。暦書ハ有リト雖ドモ、総テ暦書ニハ日月星運行ノ数術ノミヲ記シテ、天地ノ形体ト天地ノ道理トヲ詳ニセズ。[8ウ]故ニ儒家・医家ノ如キハ学テ用少シ。『天経或問』モ弊ヘ多シト雖ドモ、古今ノ諸説ヲ集メテ篇ヲ成シ、殊ニ天地ノ形体ト道理トヲ大概ニ説ケルガ故ニ、撰ミ用テ可也。本ヨリ暦書ニアラザル故カ暦数モ甚疎ク、殊ニ外国ノ暦数ハ『天経』ノ説ヲ用ヰズ、暦記ニ従テ学ブベシ。都テ書籍ニ全ク弊ヘナキハ寡キ者ナリ。知レル人ニ聞テ其書ノ得失ヲ知ベシ。予ガ是ヲ誌スニモ亦弊ヘアルベシ。見ル人正シ玉ヘ。
曰、然ラバ初ヨリ『天経或問』ヲ学テ冝キ乎。 曰、『天経或問』ハ云ニ及バズ、都テ天学ノ書ハ形体ト道理ト事業ト、三ノ者ヲ兼備テ説タル故ニ、師伝ニ非レバ解シ難シ。故ニ予ハ初学ヲ教ルニ先ヅ初メニ天学ノ名目ヲ知シメ、次ニ書経二典ヲ説テ、其後『天経或問』或ハ外夷ノ説ニ至ルマデ、皆二典ノ趣ニ合シ、天地ノ形体ニ合スルヲ取ル。是故ニ初学ノ為ニ名目ヲ記スコト左ノ如シ。 于時 享保己酉[14・1729]仲冬書于武江 西川忠次郎正休
平岡隆二「蘭学(洋学)」、日本思想史事典編集委員会『日本思想史事典』丸善出版、2020年4月。
平岡隆二 「今井溱さんと『天官書』」『人文』第67号、2020年、55-57頁。
江戸時代の日本と世界をつないだ出島や唐人屋敷は、それ単独で存在していたのではなく、この石垣の主である長崎奉行所西役所とセットで考える必要があります。
キリシタン時代にはイエズス会本部が、幕末には海軍・医学伝習所が置かれるなど、史跡の町・長崎でも、これほど重要な場所はほかにないと断言できるほどです。
個々の遺構や遺物はもちろん、「場」としての文化財的価値も、後世に向けて確実に維持されるような整備計画が進むことを、切に望みます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/52875f45784d2b9470fccf4e003a27ab0403bb35
【告知】朝日カルチャーセンター京都さんの一般向け講座で、10月17日(土)に「長崎・天草のキリシタン文化」と題してお話しさせていただくことになりました。
京都教室での対面講座だけでなく、オンライン講座も併設していますので、遠隔の方でもご参加頂けます。受講をご希望の方は以下のURLからぜひお申込みをお願いします。上がオンラインで下が対面式です。
中国の哲学はひたすら人生の目的を追求してきた。哲学者たちの思索は、ついに人間という関心領域をはずれることがなかった。自然にかんする思索といえども、人間にかんする思索の自然主義的立場からの基礎付けとして展開された。いいかえれば、哲学はなによりもまず人間学だったのである。(3頁)
土田健次郎「儒教とは何か」、大月杏奈ほか編『儒教のかたち こころの鑑:日本美術に見る儒教』(展覧会図録)サントリー美術館、2024年、8-14頁。 日本の歴史に儒教が果たした役割が簡潔かつ見事にまとめられている。長年の研究で練り上げられた独自の視点と語り口が光っている。こういう...