◇「書の美術」@大和文華館
HPの「会期の後半には、展示場を囲む文華苑にて梅がほころび始めます。ほのかにただよう梅の香とともに、書の世界をお楽しみ頂ければ幸いです」という文句に惹かれて大和文華館まで足をのばす。梅の香にはまだ少し早かったが、書の世界は存分に楽しむ。
書そのものの芸術性というよりは、料紙や装丁、また背景にある思想まで含めた総合芸術としての書に焦点をあてた展示か。
「稲富流鉄砲伝書」 越前少将松平忠直宛 慶長17年(1612)奥書
金銀泥で四季の花々を描いた料紙は見事というほかない。近世日本においては、軍学の伝統もまた、雅の世界と決して無縁ではなかったのだと実感。
「墨蹟七言絶句」 策彦周良(1501-1579)
禅僧で外交官の策彦周良による王安石「鍾山即時」の墨蹟。
澗水無聲遶竹流
竹西花草弄春柔
茅檐相對坐終日
一鳥不啼山更幽
亀陰謙斎書
澗水聲無く 竹を繞って流れ
竹西の花草 春柔を弄す
茅檐相對して 坐すること終日
一鳥啼かず 山更に幽なり
渓の水は音もなく竹をめぐって流れ、
竹林の西の草花は柔らかな春の光とたわむれている。
茅葺き屋根の軒先と向き合い終日座っていると、
一鳥も鳴かず山はいっそう静かである。
その他、武家の書は、源義経、足利尊氏、義満、秀吉髻書状、明智光秀、石田光成など豪華なラインナップ。
◇「草間彌生 永遠の永遠の永遠」@国立国際美術館
電球の部屋を出てきたマダムたちの興奮気味の会話
A「もうなんか感性がちゃうなー!」
B「せやなぁ~。感性が違うなぁ~」
A「どんなこと考えながらこんなん作ってんねんやろなあー!」
B「せやなぁ。どんなこと考えながら作りはんねんやろなぁ~」
A「芸術って、なんかすごいなー!」
B「なんかすごいなぁ~」
日常から爽快に引き剥がされるアートの醍醐味を堪能。とくに展示空間そのものが作品化していて、モノクロの部屋といい、チューリップの部屋といい、作品と観客との距離感が実にいい。草間さん本人がどこまで関わっているのか分からないが「草間の分身としての創作世界を体感いただきます」という主催者のコピーにも納得。もう草間さん、すごすぎです。
◇コレクション展@同上
こちらの草間作品のにょきにょき感もたまらない。この館は常設も充実していて、あの手この手の作品を楽しむ。
現代美術の展示を見るたびに、2000年の夏、イタリアに滞在してあれこれ見て回った思い出がよみがえる。その時は、中世、ルネサンス、バロックを中心に美術館や建築、教会などを見てまわった。ヴェネツィアで一緒に遊んだ画家さんは、僕がそういうのを見て回っていると言うと、私は中世のキリスト教絵画を見て本当に嘔吐してしまった、と言った。僕はパッラーディオがいいだの、やっぱベルニーニだの、さんざんわめいた挙句、一番衝撃を受けたのは、バチカン美術館の現代宗教美術コレクションだった。キリスト教美術の歴史を学ぶのに、あれほど素晴らしく、またふさわしい場所はないだろう。がんばれ、須磨コレクション!
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