報告書の類は年度末に刊行されることが多く、毎年大きな楽しみである。一般書や論文に比べてweb等でも情報が入手しにくいが、時に大変重要な研究がこの報告書の形で刊行されている。今年目にする機会があったもののなかから、さしあたりいくつかを紹介してみる。
◇文化財建造物保存技術協会編『重要文化財 旧唐人屋敷門保存修理工事報告書』(長崎市、2010年3月)。
興福寺内に現存する「旧唐人屋敷門」(国重文)の解体修理工事に伴って判明した諸々の事実、資料をまとめたもの。近世長崎の中国建築を考える上で貴重な情報である。
◇平川新監修、寺山恭輔・畠山禎・小野寺歌子編『ロシア史料にみる18~19世紀の日露関係 第5集』東北アジア研究センター叢書第39号(東北大学東北アジア研究センター、2010年2月)。
1805年から1812年までのロシア語史料49点を校訂・翻訳して収録したもの。内容は主に、レザーノフによる北アメリカ開発構想、フヴォストフとダヴィドフによる日本北方襲撃事件、イルクーツクの日本語学校の3つが中心。近世後期の日露関係にまつわるロシア側の資料が、本シリーズのように随時刊行されることは画期的である。
◇長崎純心大学長崎学研究所編『我利阿武船長崎入津ニ付御人数差出ニ相成候覚書 他』(長崎純心大学、2010年2月)。
長崎警備にまつわる史料4点の翻刻資料集。史料はいずれも長崎純心大学博物館所蔵。正保4年(1647)のポルトガル船入津にまつわる熊本藩の記録である標題史料のほか、大村藩による長崎警備の諸手続きに関する『長崎聞役覚書』、嘉永6年(1853)7月18日入津のロシア船についての記録『魯西亜船渡来長崎奉行取扱申上候書付』、安政開国前夜の京都における公卿衆・諸藩の動向に詳しい『異国船一件の記之内』を収録。
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