出張から戻ると、古書店に注文していた竹内光美・城田征義『長崎墓所一覧:悟真寺・国際墓地篇』(長崎文献社、1990年)が届いていた。最近とあるオランダ人と中国人の墓について調べる必要があって、やはり手元にあった方がよいと思い購入したが、「はしがき」や「あとがき」に見える墓誌解読の苦労話は身につまされる。銘文が読めないときは、余計な光がない深夜に懐中電灯で解読するのがよい、という話を聞いたことがあるが、研究者たるもの必要とあらばそこまでやるのである。
長崎の歴史(に限らないだろうが)について何事か調べようとするとき、墓碑や墓誌にまつわる情報は決して見逃すことができない。古賀十二郎や渡辺庫輔が残した膨大な調査ノートの存在からは、彼らがどれだけ墓を重視していたかがよく分かる。長崎に多いのは「サカ」「ハカ」「バカ」という冗談があるが、港を囲む山の斜面を埋め尽くして天に至る近世墓碑群の存在は、まぎれもなく長崎を長崎足らしめているもっとも重要な文化遺産であり、研究資源なのだ。
上の『長崎墓所一覧』(風頭山麓篇もある)は、稲佐の中国、オランダ、ロシアを中心とする外国人墓地を網羅的に調査し、図面とともにまとめた画期的な業績で、長崎市立博物館編『長崎の史跡(墓地・墓碑)』長崎学ハンドブックIV(長崎市立博物館、2005年)とともに、この分野の基礎文献となっている。西洋人の墓については、レイン・アーンズ、ブライアン・バークガフニ『時の流れを超えて-長崎国際墓地に眠る人々-』(長崎文献社、1991年)が、かなりの数の墓碑を背景も交えながら紹介しており、大変便利。最近の労作には、木下孝『長崎に眠る西洋人-長崎国際墓地墓碑巡り-』(長崎文献社、2009年)がある。
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